Split ASK v2 (Split 60% Apple Standard Keyboard with Acrylic case)
Split ASK v1 (Split 60% Apple Standard Keyboard)
2019年に作ったSplit ASK(Apple Standard Keyboardのキーキャップとキースイッチを使った60%左右分割キーボード)のv2を作っていたので、めちゃくちゃ今さら(なんと約2年半越し)だけど、それについて書く。
前回の反省点を改善したキーボードで、なかなか満足のいく出来になった。
前回の反省点
v1の投稿にも書いたが、そもそもv1の何がいまいちだったのか。
トッププレートとボトムプレートをステンレスにしたこと
v1は基板をトッププレートとボトムプレートで挟み込むいわゆるサンドイッチマウントで作った。この両プレートをステンレスにしてしまったせいで、打鍵感が固すぎて指が痺れる感じがあってあまり良くなかった。
打鍵音がうるさい
ベゼルレスなサンドイッチマウントにすると、プレートと基板の隙間から打鍵音が漏れまくってしまう。ALPSキースイッチはただでさえうるさいので、つまり尋常じゃなくうるさいキーボードが出来上がってしまった。
…と、大きくこの2つが気に入っていなかったので、これらを解消するようなブラッシュアップをおこなうことにした。
方針
- v1のPCBを使い回す
- 最低発注数の兼ね合いで基板が余っていたという事情
- アクリル積層ケースでPCBを囲う
- トッププレートは真鍮にする
こんな感じ。
アクリル積層ケース
うるさい打鍵音をなんとかするべく、筐体にベゼルをつける、つまりケースを用意することにしたが、この時はどういう風にケースを作るべきなのか全然分かっていなかった。
3Dプリント?もしくはアルミ削り出し?そんなのができる知識も技術も費用もない。そんな中で、アクリルプレートを重ねて立体的なケースを作れることを知った。
qlavier氏というキーボードデザイナーの方の作品。めっちゃくちゃ素敵なデザインのキーボードで、初めて見た時は感動した。アクリルの下に透けて見えるトッププレートの真鍮が綺麗。トッププレート右下はAppleのロゴの形にくり抜かれていて、その下に見えるグリーンのPCBが良いアクセントになっている。
これを丸パクリ……というわけでは決してないけど、盛大にオマージュさせていただくことにした。
アクリル積層ケースの設計
さて、ケースを作る。今回もIllustratorで作成。
全レイヤーを重ねているので分かりにくいけど、オレンジがトッププレート。その下に薄く見えているグレーのやつがPCB。ブルーがトッププレートより上のパーツで、ピンクがトッププレートより下のパーツ。
左上にはアクリルプレートの厚みの計算をしている痕跡がある。
トッププレートより上のパーツだけ表示したもの。これがキースイッチの外周を囲うベゼルになる。キースイッチの高さを考慮して、3mmのアクリルを3枚重ねることにした。上から下にかけて少しずつ幅を太くしている。
トッププレートだけ表示したもの。キースイッチをこのトッププレートに嵌めて、キースイッチはPCBに挿し、はんだ付けする。PCBをトッププレートで吊っているようなイメージ。qlavier氏のキーボードに完全にインスパイアされたアップルロゴのくり抜きもある。
トッププレートより下のパーツだけ表示したもの。TRRSジャックとPro Microの厚みを考慮すると、3mmのアクリルプレートを5枚重ねる必要があった。
打鍵音を削減するために、TRRSジャックとPro Microの箇所以外はアクリルをくり抜かないようにして、なるべく音が逃げないようにした。
こんな感じでケースの設計は完成!
発注
真鍮トッププレートは例によってLaserBoostに発注。アクリルプレートのカットはElecrowに発注した。
基板やその他のパーツはv1のものを流用。
組み立て
無事に届いたトッププレートとアクリルプレート。ちなみに、アクリルプレートの保護シート?を剥がすのが、パーツ数が多いのでめちゃくちゃ大変だった。
例のごとくダイオードとTRRSジャックのはんだ付け。
トッププレートにキースイッチをはめる。v1はSKCM Salmonで組んだが、v2はSKCM Orangeにしてみた。サーモン軸を取り外すのが面倒だったというのもある。
PCBをキースイッチに挿して(逆か?)、はんだ付け。
アクリルプレートを重ね合わせてケースを作っていく。金色の棒は黄銅スペーサー。
下部アクリルパーツの上に、トッププレート達を載せる。
…あとは丈夫アクリルパーツを載せて、ネジを留めて、キーキャップをはめて……という手順なんだが、なんと写真を撮っていなかった。ということでいきなり完成後の写真を以下に載せる。
完成!
感想
まず見た目が良い
qlavier氏のデザインを真似させてもらったから当然ではあるが……。見た目がとても気に入っており、所有欲が満たされる。
v1みたいにベゼルレスでミニマムなデザインも嫌いではないけど、やはりベゼルがあるこのv2の方が「キーボード感」はあるなぁと思う。
打鍵感が良くなった
トッププレートが真鍮、筐体がアクリルということで、v1のステンレスと比べるとかなりソフトな打ち心地になった。指にかかる衝撃がかなり和らいでいる印象があり、大変満足。ただ、もしかしたら人によっては柔らかすぎると感じるかも知れない。
打鍵音も良くなった
v1のときは単純にうるさかったのと、ステンレスのプレートのせいなのか、「シャキッ」という感じの金属っぽい音がするのが結構気になっていた。v2はベゼルがあるのに加えて、キースイッチの下部の隙間をなるべく少なくなるようにケースを設計したので、漏れる音がかなり減っている印象。音も「カシャッ」という感じの、オリジナルのApple Standard Keyboardの音に近づいている……ような気がしないでもない。
“”上””が気になる
アクリル積層ケースは、まぁぶっちゃけると、所詮アクリルという感じではある。剛性も低い感じだし、打鍵音もサンドイッチマウントよりは圧倒的に良いが、めちゃくちゃいいというわけではない。
「もしこれがアルミ削り出しのケースだったら、どれだけ素晴らしい打鍵感・打鍵音なんだろう……」というのはどうしても考えてしまう。
……と、上を見ればキリがないが、2019年の僕にしては上出来なキーボードが出来上がったんじゃないかなと思う。
この次……はなく、Split ASKの改良はここでおしまい。その後はアルミ削り出しキーボードを作ろうとして挫折したり、カスタムキーボードにハマったりしている。また機会があれば書こうと思う。