10GbEのNASを構築した
少し前のことになるけど、6年ほど使っていたNASを新しくした。
もともとはASUSTORのAS-202TEという2ベイのNASに、3TBのHDDを2つ挿してRAID1で使っていた。しかし読み書きの速度もいまいちだし、そもそも残り容量がかなり厳しく、不要なデータを消して騙し騙し使っていた。
そういう運用もいよいよ限界ということで、HDDを大容量のものに置き換えるだけでもいいかと思ったけど、NAS自体の性能ももっと上げたいなということで、この機に10GbEのNAS環境を構築することにした。
求めるスペック
- 4ベイ以上
- RAID5 or RAID6 or RAID10を使いたいので
- 大きすぎても置き場所に困るので、ほどほどの大きさのもの
- CPUの性能がそこそこ良い
- メモリ搭載量が大きい
- M.2 SSDを搭載可能
- キャッシュとして使いたいので
- 10GbEポートが1つ以上ある
…というような条件で探したところ、QNAPのTS-473が良さそうだったので、これを買うことにした。
- CPU: AMD RX-421D クアッドコア 2.1GHz (64bit x86)
- メモリスロット: DDR4 SO-DIMM (DDR4-2400) x 4
- 最大メモリ: 64GB
- ドライブベイ: 4
- M.2 SSDスロット: SATA 6Gbps x 2
- 10GbE: 拡張カードで増設可能
- PCIeスロット: PCIe Gen3 x4 x 2
- サイズ: 199 x 188 x 279 mm (WxHxD)
- 重量: 4.9kg
というようなスペック。
大きさもそこそこ、CPUも文句なし、メモリも沢山詰めるしキャッシュ用のSSDも挿せるし、拡張カードを使えば10GbEも使える。
ちなみにM.2 SSDスロットが最初からあるが、これは速度がSATA 6Gbpsなのでそんなに速くない。M.2 SSDのスペックを活かすなら、PCIeスロットに拡張カードを挿した方が速度が出る。今回は性能を追い求めるべく、拡張カードを使う方向でいくことにした。
ちなみに、TS-473を買った少しあとに新型が出て泣いた。TS-473Aというモデルで、
- CPU: AMD RX-421D 4コア 2.1GHz → AMD Ryzen V1500B 4コア 2.2GHz
- LANポート: 1GbE → 2.5GbE
- M.2 SSDスロット: SATA 6Gbps x 2 → M.2 2280 PCIe Gen.3 x1 x 2
- USB: USB 3.2 Gen.1 → USB 3.2 Gen.2
というように、結構泣きたいくらいスペックが上がっている。今買うならTS-473Aの方がいいでしょう。
TS-x73Aシリーズ – AMD Ryzen搭載のタワー型新モデル、特長とモデル比較
QNAP TS-473
AS-202TEに比べるとなかなか大きい。以前書いたeGPUのMantiz Venusより一回り大きいくらい。
作りはしっかりしている。以前はNASってHDDケースに毛が生えたもの、くらいのイメージだったけど、小型のベアボーンPCくらいのがっしり感がある。
パーツの購入
いろいろ買いました。
HDD
HDDは、今までは適当なHDDを使っていたが、ちゃんとNAS用のものにしてみようと思い、東芝のNAS用HDDにしてみた。MNシリーズの8TBモデル、MN06ACA800を4本買った。
なかなかいいお値段になったけど……、長く稼働してくれることを願いたい。
メモリ
TS-473はDDR4 SO-DIMM (DDR4-2400)のメモリを、最大16GB x 4枚挿せる。NASにそこまで必要ないとも思いつつ、ここぞとばかりに16GBを4枚購入。Komputerbay DDR4 ノート用メモリーというのが安かったので、これにした。
拡張カード
拡張カードの1つ目は、10GbEポートが1つ搭載されたQNAP QXG-10G1T。これを挿すだけでNASが10GbE対応になる。
2つ目は、M.2 SSDを2枚搭載することができるQNAP QM2-2P-344。
似たようなカードが沢山あるので、間違わないように気をつけたい。TS-473のPCIeスロットはGen3対応なので、拡張カードもGen3対応のものにした。
M.2 SSD
M.2 SSDは、対応リストを見ながら、価格とスペックのバランスの良さそうだった、Western Digital WDS100T3X0Cを2枚購入。
容量は1TBで、読み込み速度は3470MB/s、書き込み速度は3000MB/sと、必要十分なスペック。
スイッチングハブ
NASが10GbEになっても、PC・スイッチングハブ・LANケーブルも10GbE対応にしないと意味がない。
幸い、今使っている2018年モデルのMac miniは、購入時になんとなく10GbEオプションをつけていたので、特に何もする必要はない。
スイッチングハブはただの1000BASE-T対応した適当なものをずっと使っていたので、この機にリプレイスすることにした。10GbE対応のスイッチングハブで普及価格帯のものはあまり選択肢がなく、一番無難そうなNETGEAR GS110MXを買ってみた。
組む
では組み立て……といっても、自作PCに比べたら大したことない。
HDDをトレイに取り付けて、挿入する。ネジ留めの必要がなくてとてもかんたん。
側面のパネルを開けて、もともと挿してあったメモリを取り外して、Komputerbayのメモリを取り付け。
M.2 SSDを拡張カードに取り付ける。
最近は自作PCからも遠ざかっていたので、実はM.2 SSDを扱うのははじめて。こうやって熱伝導用のシートを貼ったりするのも初めてで、ちょっとおもしろかった。
拡張カードスロットには上面からアクセスする。
2枚の拡張カードを取り付けて、完成!
RAID5か、RAID6か、RAID10か
さて、いざNASの起動だが、4つのHDDでどういうRAIDを組むか決めないといけない。一度RAIDボリュームを構築してしまうと簡単には他のRAIDに変更できないので、本格稼働する前に慎重に検討して決める必要がある。
結構悩んだけど、以下のページなどを読んで、最終的にはRAID10でいくことにした。
RAIDの解説は他のサイトに譲るとして、最大2つのHDDが壊れても復旧可能(壊れるHDDによるが)、RAID6よりもシンプルな構成の分書き込み速度が(少しだけ)速い、RAID5 or RAID6よりも復旧時の負荷が低い、あたりを理由にRAID10に決めた感じである。
ベンチマーク
肝心の速度。AmorphousDiskMarkを使って測ってみた。
左が今まで使っていたNAS、右が新しいNAS。古いNASは5400rpmのHDD2本のRAID1、新しいNASは7200rpmのHDD4本のRAID10。ちなみに新しいNASの方はM.2 SSDキャッシュも有効になっているが、ベンチマークソフトで効果があるかは分からない。
当たり前だけど、TS-473の方が圧倒的に速くて嬉しい。Sequential Read/Writeともに5倍以上になっている。Random Readはまさかの約390倍(ほんまか?)、Random Writeは約6倍と、めちゃくちゃ速い。
10GbE化、RAIDが1→10になったこと、HDDの性能アップ、NAS本体の性能アップと、様々な要因があると思われる。
正直、思ったより速度出ないな?と思ったが、HDD4本だとこんなものかも知れない(RAIDは基本的にHDDの本数が増えれば増えるほど速くなる)。8ベイのNASでRAID5とかにすれば、倍くらいの速度が出ると思うが、流石に8ベイNASを置いておく場所は今の家にはない。
あと、Mac miniの10GbEの速度の限界もあるらしい。
Mac mini 2018のオプションの10Gb Ethernetはのどぐらいの速度(実速)? « BOB’S MAC
この記事によると、実測値は600MB/sくらいということらしい。Sequential Writeが約540MB/sくらいにとどまっているのも、もしかしたらMac miniがボトムネックになっているかもしれない。まぁ別に不満はないんですが。
体感速度
ベンチマークだけではなく、実際に使ってみると、やっぱりめちゃくちゃ作業が快適になった。
写真の現像だと、「Macのローカルに写真を保存→現像→あとで写真をNASに移動」というワークフローをとっていたけど、「NASに直接写真を保存→現像」ということができるようになった。
Lightroomの現像パネルでRAWデータを次々に切り替えても、データがローカルにあるのと同じくらいの速度で読み込んでくれる。
動画編集も、動画データをNASから直接読み込んでも、特に事前にキャッシュファイルの生成などをしなくてもスムーズに編集できるようになって、とても快適。
Finderでの単純なファイル操作でも、ファイルのインデックスやコピーの速度がめちゃくちゃ上がってストレスがなくなった。
あとは、これは体感速度じゃないけど、NASの容量が3TBから16TBと大幅に増えたので、どんなデータでもどれだけでも突っ込める、という安心感がすごい。
音がうるさい
7200rpmのHDDが4本、しかもうるさいと評判の東芝のHDDだからか、NASにアクセス中はゴリゴリという音がかなりうるさい。日中はそこまで気にならないけど、深夜にはやはり気になる。
- ディスクの不良セクターチェックなどは日中にやる
- SSDキャッシュのHDDへの書き込みも日中にやる
- ディスクスタンバイを設定する
という設定をすることで、あまり気にならなくなった。それでも、なぜか深夜に突然ゴリゴリと鳴り始めることはあるけど。
ディスクスタンバイをもっと細かく設定できるようになれば嬉しいんだけど。例えば、日中はスタンバイモードをオフで、深夜だけ一定時間アクセスがないとスタンバイに移行、みたいな。
スペックを盛ったために、結構な出費になってしまった。その金額分くらいは末永く稼働してもらいたい。
10GbEのNASはなかなか快適です。