FUJIFILM X-T3
1年ほど前にFUJIFILMのX-T3を買っていた。
もともとミラーレス一眼はSONYのα6000を使っていて、Vario-Tessar T* E 16-70mm F4 ZA OSS SEL1670Zとか、Sonnar T* E 24mm F1.8 ZA SEL24F18Zを使っていた。フルサイズはLeica M9-Pにまかせて、軽量コンパクトなAPS-Cをサブカメラに持つ、という感じ。
SONYのカメラとレンズはいわゆる解像感は抜群にいい。ただ、カメラから出力されるJPGの色が好きではなかったし、RAWをPCで調整してもなかなかしっくりこないことが多かった。JPGよりはRAWを現像したものの方がまだマシだったので、仕方なくRAWで撮っていた。
さて、去年のはじめ頃に我が家に犬がやってきた。
家に犬がいたりすると、やっぱり写真を撮りまくってしまう。そしてめちゃくちゃ動き回る被写体なので、どうしても連写して撮影枚数もかさむ。一度に何百枚も撮った写真が全部RAWだったら現像も面倒すぎるし、HDDの容量がいくらあっても足りない。ということで、撮って出しのJPGが綺麗なカメラに買い換えることにした。
なぜX-T3か
JPGが綺麗というと、まず上に述べたようにSONYのカメラは選択肢から外れた。
写りが気に入らないのはα6000だからであって、後継機のα6500やフルサイズのα7系なら改善しているかもしれない。でも、写りとは関係ないけどα系の操作性はあまり好きではなかったし、フルサイズのα7系にしてしまうと、ボディはともかくレンズが大きくて重くて高価になりがち。
やはりAPS-CでJPGが綺麗でAFが速くて操作性も良いカメラにしたかった。
「撮って出しJPGが綺麗」といえばFUJIFILMしかないですよね。ということで、FUJIFILMのXシリーズの中で一番AFが速いX-T3を買った。AF速度が必要なのは、もちろん動き回る犬を撮影するためである。
X-T3の値段はそれなり、というかAPS-Cなのにフルサイズのエントリー機よりは高いくらいなんだけど、質感や手に持ったときの剛性感、操作性やレスポンスの良さ、機能の多さには満足感がある。そして自慢のフィルムシュミレーションはやはり抜群に良い。
外観
フィルムカメラ然としているように見えて、意外とモダンなデザイン。本体カラーはブラックにした。プロっぽくてかっこいい。
また、エントリー機種にありがちな撮影モードを選ぶダイヤルというものはなく、軍艦部にはISO感度、シャッタースピード、露出のダイヤルが並んでいる。このあたりもストイックで上位機種っぽくていい。
あとこれは細かい箇所だけど、背面のボタンに印字が少ないところが非常に良い。
最近の多くのカメラは十字ボタンやFnボタンに割り当てる機能を自由に設定できる。しかしデフォルトで割り当てられている機能がプリントされていると、印字と実際の機能にズレが生じてしまう。使っていてすごく気持ちが悪いし、そもそもダサい。
X-T3ではそれが無く、背面を見るたびに嬉しくなってしまう。細かい箇所なんですけど。
機能
機能に関しては多機能すぎてここでは語り尽くせないけど、いいなと感じているところを挙げる。
操作性
多くの項目をソフトウェア上ではなくハードウェアで設定できるのはとても便利。シャッタースピード、ISO感度、露出、ドライブモード、測光モードについては軍艦部にダイヤルがあり、AFモードは正面右下に切り替えレバーがあり、そして絞り環はレンズにある。電源がオフでも設定を変えられるので、移動中などに上面を見るだけでほぼ全ての撮影設定をあらかじめセットできる。
また、X-T3にはP(プログラムオート)、A(絞り優先オート)、S(シャッター優先オート)のようなモード切替ダイヤルはない。
シャッター速度とISO感度をA(オート)にして絞りをマニュアルにすれば、それはつまり絞り優先オートということになる。絞りとISO感度をAにしてシャッター速度をマニュアルにすれば、シャッター優先オートになる。この直感的で単純な操作体系が素晴らしいので、これだけでもFUJIFILMのカメラを買う価値はある。
ちなみに絞りとシャッター速度をAにしてISO感度をマニュアルにすることもできる。その場合は「ISO優先オート」とかになるのだろうか?試したことはないけど。
犬の撮影だと、シャッター速度と絞りをマニュアルにしてISO感度をAにすることが多い。ISO感度が上がってノイズが増えてもいいので、狙ったシャッター速度とボケで撮りたいという狙い。
AF-C
AF速度はレンズによるところも大きいけど、AFの速いレンズをX-T3につけると非常に快適になる。AF-Cはかなり追従性がよく、例えば走り回る犬でも、横や斜めの移動であれば問題なくフォーカスが合い続ける。
奥から手前に、かなりのスピードで一直線に走ってくる場合などは流石に合焦が追いつかないことが多いけど、AF-Cカスタム設定という項目でAF-Cの食いつきなどを細かく調整すると、初期設定よりはかなりマシになる。
ファインダー
ファインダーの横に「VIEW MODE」という、EVF/液晶モニターの表示を切り替えられるボタンがあるのが便利。
ジンバルを使って動画撮影をしているとき、ジンバルのフレームがX-T3のEVFに近づくと自動的に液晶がオフになり、背面液晶を見たいのにEVFに表示が切り替わってしまう。しかしVIEW MODEボタンを押して常に液晶モニターを使うようにすることができる。カメラをジンバルから外して写真撮影に使うときも、またボタンを押せばEVFを使うように設定できる。
エントリーモデルのカメラだとそもそも切り替えが不可能だったり、都度メニューの奥深くで設定を変更する必要があったりするが、こういうところに専用ボタンがあるのは上位機種の良さという感じがする。
USB-C
USB端子がType-Cで、もちろんUSB経由の充電にも対応している。MacBookやiPad Proと同じUSB-Cケーブルを使えるのでとても便利。世の中のすべてのガジェットは一刻も早くUSB-C端子を搭載してください。
画質
フィルムシュミレーションをはじめとして、ダイナミックレンジ、ハイライト、シャドウ、カラーなどの描写に関わる項目を細かく設定することができる。他にはカラークロームエフェクトという、特定の色の再現度を高くできる機能もある。
肝心のJPGの画質だけど、画像を等倍で確認すると、思ったよりもノイジーだったり、細部が潰れていたりする。しかし倍率を下げて写真全体を見ると、雰囲気がとてもよく、α6000で撮ったものより圧倒的にいい写真に見える。写真の良し悪しは解像感だけで決まるものではないということがよく分かる。
もちろん等倍で見ても完璧に解像しているに越したことはないのかもしれない。しかし、いくらシャープに写ったとしてもカラーバランスがおかしかったり光や影の描写が微妙でRAWでも補正しきれない(できたとしても労力がかかる)ような写真が撮れるカメラよりは、パッと見た時に「あ、素敵だな」と思える写真が撮れるカメラの方が僕はいいと思っている。
レンズ
FUJIFILMのXマウントは、ラインナップは少ない(特にサードパーティ製が全然ない)ものの、いいレンズがたくさんある。
XF35mmF1.4 R
X-T3と一緒に購入したレンズ。換算50mmの単焦点で、「神レンズ」との呼び声も高い。評判通り描写は繊細でボケも綺麗。ピントがちゃんと合うとハッとする写真が撮れる。軽量でコンパクトだし、中古なら値段もお手頃。
毛の柔らかさが伝わってくる線の細い描写がたまらない。
しかし、結構前(2012年)に発売されたレンズということもあり、AFが遅すぎた。モーター駆動音もうるさい。「X-T3につけるとAF速度が爆速に!」みたいな評判を目にしたので買ってみたが、AF-Sではまぁ問題ないけど、AF-Cでは走り回る犬に絶望的にピントが合わなかった。
なので、写りは最高だったんだけど、比較的すぐに売却してしまった。AF速度を改善したII型を出してほしい。
XF35mmF2 R WR
XF35mmF1.4 Rを売って買ったのがこれ。XF35mmF1.4Rより少し暗く少し重いけど、安い、コンパクト、防塵防滴、そしてAFが速い。
XF35mmF1.4Rとは違い、XF35mmF2 R WRはインナーフォーカス式でステッピングモーター駆動のAF。X-T3と組み合わせるとAFは非常に速く、音も静かにスッとピントが合う。AF-Cの追従性もかなり良くなり、歩留まりが向上した。
XF35mmF1.4Rでは全然撮れなかった、走り回る犬の写真がたくさん撮れて最高。
ただ、不満だったのは画質。もちろん、流石に単焦点なのでそれなりに綺麗だけど、XF35mmF1.4Rに比べると線も太く、ボケもあまり綺麗に見えない。F2開放なので単焦点っぽいボケた写真が撮れるのはいいけど、うーん…それだけ、という感じ。
XF16-55mmF2.8 R LM WR
XF35mmF2 R WRを売却して買った。換算24-82.5mmでF2.8通しのズームレンズ。
色々と犬の写真を撮る中で、もう少し望遠や広角の写真も撮りたくなってきた。でも単焦点レンズを複数持ち歩いて都度付け替えるのは面倒。そうなるとやはりズームレンズになる。
Xマウントで標準ズームといえば、
あたりになる(エントリー向けのXCレンズは除外)。
XF16-80mmF4とXF16-55mmF2.8で迷ったが、最終的には画質の良い方を選んだ。
XF16-55mmF2.8の写りは、XF35mmF1.4よりは劣るけど、XF35mmF2と同じくらいか、それよりも良い。暗いところでは微妙だけど、光の条件が良ければズームレンズとは思えないような線の細い描写をしてくれる。
開放F値は2.8なので、50mm程度では単焦点ようなボケは得られないけど、望遠端の82.5mmならなかなかいい感じにボケてくれるし、ほどよい圧縮効果が非日常感を生んでくれる。
そしてAFはXF35mmF2よりもさらに速い。AF-Cの歩留まりがさらに向上した。よく公園に行くので、防塵防滴なのも安心感がある。
いまいちなところは、このクラスのレンズなのに手ブレ補正が無いところと、大きくて重いところ。写りとのトレードオフなのは分かるけど、もう少し小さくて軽いければAPS-Cのメリットが活かせて良かった。手ブレ補正については残念だが、X-T3の後継機のX-T4ではボディ内手ブレ補正が搭載されるかも知れないという噂がある。そうなればもっと使い勝手が良くなると思う。
そして、色々と写真を載せたけど、これらは全部JPG撮って出し。X-T3の設定を色々といじっているのでその時々で色合いの変化はあるけど、今までなら全部RAW現像していたところが、その手間が一切なくなったのは本当に楽でいい。
JPGなのでRAWに比べてLightroomで表示する時の負荷も少ないし、写真の選別もやりやすくなった。みんなも今すぐ無駄にRAWで撮るのをやめよう。
もう長くなりすぎたので書かないけど、X-T3は動画撮影のスペックもとても高い。まだまだ写真がメインだけど、時々動画も撮ったりしているので、そのうちそのことについても書けるといいなと思う。
X-T3にはとても満足している。もう少しボディが軽量コンパクトになるか、ボディ内手ブレ補正がついて欲しいところだけど、それはX-T4に譲ることになりそう。
フィルムシミュレーションは本当に素晴らしくて、各カメラメーカーのピクチャーコントロール的なものとは明らかに一線を画す仕上がりの写真が撮れる。
レンズに関しては、XF16-55mmF2.8は便利でAFも速くて気に入っているけど、やはり最初に買ったXF35mmF1.4の描写が忘れられない。でも犬を撮るなら明らかにAF性能が低いし……。
それよりも単焦点の描写は諦めて、より望遠レンズを手に入れるのもありかなと考えている。やっぱり走る犬をアップで捉えたいし。そうすると、軽量コンパクトなXF55-200mmF3.5-4.8 R LM OISか、大きくて重いけどXF16-55mmF2.8と同じレッドバッジのXF50-140mmF2.8 R LM OIS WRか。
悩みは尽きません。