いいデザインのグラフィックやプロダクトは、何十年経っても古くなく、新しく見える。

Web/UIデザインの話だと、例えばiOS 6までようなスキューモフィックなUIデザインを今見ると、古いなぁと感じてしまう。以前はアプリやWebサイトの操作がよく分からないユーザーでも操作しやすいように、実際のオブジェクトを模してパーツを装飾していた。しかし徐々にスマートフォンの普及などによりユーザーがスクリーン上の操作に慣れてきて、「別に本当に押せるかのような立体感のあるボタンなんて必要ないよね」というような理由で、いわゆるフラットデザインがスキューモフィックデザインに取って代わって流行している。

iOS6(左) / iOS10(右)のホーム画面のスクリーンショット

もっとも最近は、一時期の過剰なほどの(過剰すぎて分かりにくい)フラットデザインからも脱却のきざしがあるように感じられる。ボタンとテキストの区別もつかない、見出しのフォントのウェイトが細すぎて本文との違いが分からないようなデザインは減ってきている。Web/UIデザインにおいて2017年に「今っぽい」と思えるのは、こういったフラットではあるけど適度にシャドウやボーダーをあしらっているデザインではないかと思う。

Web/UIデザインはまだ歴史が浅いのでなんとも言えないが、グラフィックデザインの世界には何十年後に見ても美しいデザインというのは多数存在している。共通しているのは、シンプルであること。装飾でごまかさず、配置、余白の取り方、文字のジャンプ率、視線の誘導の仕方などで魅せている。どれもデザインの教本に載っているような基礎的なことだ。

サルヴァトーレ・フェラガモ展 ポスター / 田中一光 (1998年)

田中一光氏によるフェラガモ展のこのポスターはとても好きで、色遣いや曲線の柔らかな感じ、余白感や文字の置き方がとても綺麗。もう二十年ほど前のデザインだけど、今街中に貼られていても全く古く見えないと思う。

他にも、今見ることができる昔のグラフィックデザインでひとつ例を挙げると、NASA Graphics Standards Manualは今見ても全く古く見えない。そもそもNASAのWorm Logotypeが1974年に作られたとは思えないほど洗練されているのだけど(僕が好みというのもあるけど)、このマニュアルもとても整然としていて綺麗。これが今年出版されたとしても違和感を持つ人は少ないだろう。

シンプルなデザイン。最近はWeb/UIデザインにもそういう流れは来ていて、Complexion Reductionなんて言っている人もいる。見出しは太く大きく、要素間の余白をしっかりと取り、そしてあしらいはできるだけ抑える。フラットデザインとはまた違った趣があるこういったデザインは、良い意味でグラフィックデザインっぽいと思うし、数年後に見てもスキューモフィックなものを今見て思うよりは古臭く思わなさそうだ。装飾には流行があるけど、デザインの基礎には流行り廃りはないのだな、と感じる。